『正法眼蔵』を読んでみます

      ~『現代語訳の試み』と読書ノート

超難解との誉れ(?)高い書『正法眼蔵』を読んでみます。
説いて聞かせようとして書かれたものである、
という一点を信じて、…。

十一 第六問 坐 

2 答え

 しめしていはく、「むかしよりの諸仏、あひつぎて修行し証入せるみち、きはめしりがたし。ゆゑをたづねば、ただ仏家のもちゐるところをゆゑとしるべし、このほかにたづぬべからず。
 ただし、祖師ほめていはく、坐禅はすなはち安楽の法門なり。はかりしりぬ、四儀のなかに安楽なるゆゑか。いはんや一仏二仏の修行のみちにあらず、諸仏諸祖にみなこのみちあり。」
 

【現代語訳】
 教えて言う、「昔からの諸仏が、相次いで修行し悟りに入られた道は、熟知することが困難ですが、その理由を尋ねられれば、ただ仏祖の家門が用いてきたことが理由であると知りなさい。このほかに尋ねることは出来ません。
 但し、祖師は褒めて、坐禅は安楽の教えである、と言いました。推察するに、行住坐臥の四儀の中で安楽なためでしょう。まして坐禅は、一人二人の仏が修行した道ではありません。すべての仏や祖師たちが、皆この道を用いてきたのです。」
 

《「熟知することが困難」だというのは、諸仏が「証入」した道はいろいろあるという考え方のようで、『参究』は「どれほどあるのか」知りがたい、解していますし、『全訳注』も「一概にどれと定めていいがたい」と、選択の問題のように訳します。
 そうした中であえて「坐」を進める理由は、「ただ仏祖の家門が用いてきた」からだと言います。「家門」というのが解りにくいのですが、「仏家はただそのようにしてきたのだ」(『注釈』)というような意味なのでしょう。
 しかし、それでは、坐禅を唯一最上のものと勧めるのには、少し弱いでしょう。禅師としては、坐禅以外の道を認めていないように思います。
 そこで、ここの前半は、坐禅は「むかしよりの諸仏、あひつぎて修行し証入せるみち」であって、その所以を知ることは常人には難しい。ただ仏家が行ってきた道なのだから、それを信じて、他に目を向けてはならない、と解してはどうでしょうか。
 そうすると後半は、その所以は知りがたいが、全く根拠がないわけではなく、祖師が「坐禅はすなはち安楽の法門なり」と言っているではないか、しかも「諸仏諸祖」はみなこの道(坐禅)を通して「証入」しているのだ、というふうに解せます。
 普通に考えれば、仏家の中にいろいろな「証入」の道を経た人がいるが、我々の信ずる仏祖の系譜は皆坐ることによって「証入」されたのだから、それを疑ってはならない、「このほかにたずねるべきものではない」ということのようです。
 「祖師」の言葉については、『全訳注』が古註に「長蘆(かつて中国に存在した県名だそうです)の宗賾(ソウサク)禅師」の言葉とする説を挙げています。》

1 問い

 とうていはく、「仏家なにによりてか四儀のなかに、ただし坐にのみおほせて禅定(ゼンジョウ)をすすめて証入をいふや。」
 

【現代語訳】
 問うて言う、「仏祖の家門では、なぜ行住坐臥の四儀の中で、坐だけを取り上げてその禅定を勧め、悟りに入ると言うのですか。」
 

《第六の問いです。前節の答えを受けて、ということでしょうか、ではなぜ「坐」禅なのかという問いです。
 「四儀」は、「または四威儀という。行・住・坐・臥の四つがぴたりと作法にかなえる(ママ)ことをいう」(『全訳注』)のだそうで、「菩薩善戒経」にそのあり方が説かれているそうです(コトバンク)。
 行く、止まる、坐る、横になる、という四つの中で、特に「坐って」禅定に入ることに意義を置くのはなぜなのか、という問いで、これもなるほど、と思われる問いです。
 「禅定」は前段のとおり、「心を統一して三昧に入り寂静になること」。
 「行」は歩くことでしょうか。歩きながらものを考えるのはよいということも、よく言われます。比喩的に、あることをしようとするときに、実際のその活動しながら、そのやり方や意味を検討する、という意味でも言われますが、そうではなくて、本当に歩きながら思惟を巡らすという意味です。カントの散歩は有名ですが、あれは規則正しい生活、という意味だったでしょうか。
 「住」は、止まる(立ち止まる)、とされますが、実はどういう状態を考えればいいのか、と思ってしまいます。立っているということなのでしょうか。
 そういえば以前、勉強は立っている状態が頭に入りやすいと、家ではいつも立って勉強しているという、優秀な受験生がテレビで紹介されたことがありました。
 「臥」はもちろん横になって寝る(眠るのではありません)ですが、横になって考えるというのは、ろくなことを考えなさそうな気がして、いかがなものかと思います。閑話休題。》

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